| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) I03-05 (Oral presentation)
甲虫目ハネカクシ科において最大の分類群であるヒゲブトハネカクシ亜科には、森林環境をはじめ地中や潮間帯、担子菌類上など様々な環境に適応した種が含まれている。その中でも特殊な生息環境として、アリやシロアリのような社会性昆虫の巣が知られている。このように生活史の少なくとも一部でアリやシロアリと関わり合いながら生活する特性を好蟻性・好白蟻性という。ヒゲブトハネカクシ亜科における好蟻性・好白蟻性種には、カブトガニのように扁平な体形や寄主の外部形態に酷似する体形など、珍奇な形態を有するものが多い。これらは一般的に強い寄主特異性を有し、生物間相互作用を介した種や形態の多様性を理解する上でも興味深い一群である。しかし、隠蔽的な生息環境や個体数の少なさにより、これらの生物学的知見は非常に限られている。本公演では、ヒゲブトハネカクシ亜科内の幅広い分類群に属する好白蟻性種と好蟻性種の分子情報を用いて行なった系統解析の結果を紹介する。本解析より、好白蟻性が亜科内で多数回進化し、特殊な外部形態もいくつもの系統で収斂進化していることが明らかになったほか、一部は好蟻性種と好白蟻性種が同じクレード内に復元され、寄主転換を経て多様化した進化的背景が示唆された。