| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) I03-06 (Oral presentation)
双翅目や膜翅目の微小な昆虫が持つ、透明で薄い翅は、暗い背景で観察すると非常に鮮やかな薄膜干渉による構造色を発色する事が知られており、WIPs(Wing Interference Patterns)と呼ばれている。WIPsは非常に安定した形質で、分類形質としても注目されているが、未だに定量化法が確立されておらず、人間の視覚に基づいた可視表現型としてのみ活用されている。翅の微細な物理構造を反映するWIPsは、膨大な翅形態形成過程の変異の情報を保持する可能性があるため、雌雄間、種間などでWIPsに量的な違いが生じる可能性が高い。しかし、このようなWIPs変異は、必ずしも人間の視覚で認識できるとは限らず、知覚の限界を超えた情報を活用する必要がある。その定量的な評価方法はまだ未開発であり、本発表ではハイパースペクトル画像解析を用いた方法を提案したい。ハイパースペクトルカメラは、対象物からの反射光を回折格子等で分光し、非常に狭い波長域の光強度をハイパースペクトル情報として個々に取得することで、肉眼では識別困難な細かな色の情報を判別することができる。このハイパースペクトル情報を用いる事で、肉眼やRGB値による色情報分析では捉えられなかったWIPsの特性を捉えられる可能性がある。本研究では、ハイパースペクトル画像情報を用いて、WIPsを定量的に評価する方法を開発し、WIPsの持つ特性を評価する事を目的とした。ショウジョウバエ類を研究材料として用い、WIPsの種内、種間変異の検討を行った結果を報告したい。