| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) I03-07 (Oral presentation)
ブナでは年ごとに開花量や結実量の変動があり、数年に一度、広範囲に渡って同調して一斉に花を咲かせ結実する豊凶現象が知られている。ブナ科の他の樹種においては開花の時期や開花後結実に至るまでの時間には相違があるため、これらの繁殖形質は種ごとに厳密に制御されていると考えられる。開花タイミングについてはこれまで分子遺伝学的研究によってその遺伝的基盤が明らかにされてきた。ブナにおいては、花成経路統合遺伝子として知られるFLOWERING LOCUS T(FT)の発現量変化の観測から、FT遺伝子の発現量の年変動が豊凶をもたらす基盤となることが明らかにされてきた。しかし、ブナ科の他種においてはFTの同定と発現量の季節変化の定量は立ち遅れているため、種間でみられる繁殖形質の多様性がどうして生じるのかその遺伝的基盤については未解明のままである。本研究では、繁殖形質が多様なブナ科樹木を対象に開花遺伝子全体の進化的保存性と開花遺伝子の季節発現様式を調べた。
ブナ、アラカシ、マテバシイにおいて採取された芽と葉を対象にRNA-seqにより網羅的に配列情報を取得し、種ごとの平均的な進化速度と開花関連遺伝子の進化速度を比較することにより、開花遺伝子の保存性を推定した。
アラカシとコナラにおいて、九州大学伊都キャンパスにおいて2017年4月〜2019年2月の期間で月ごとに採取された葉サンプルを用いて定量PCRによって開花遺伝子発現量を定量した結果を発表し、種間の形質の相違を生み出す遺伝的基盤について考察する。