| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) J01-02 (Oral presentation)
日本における自然保護の取組において,特に戦後以降は市民が自主的に活動を行う「自然保護団体」の存在は大きいといえる。しかし少子・高齢時代に入り,既存の自然保護団体の構成員の高齢化や会員の減少が目立ち始め,国内における自然保護活動の縮小が懸念される。そこで本研究では,まず将来世代=若者が抱く自然保護活動への参加意識と実態を把握することを目的とし調査を行った。
インターネット調査会社に登録するモニターに本調査への参加を求め,国内合計3000名から回答を得た。本調査では1)自然保護活動への参加の実態と2)自然保護活動への参加の意欲(意識)に関する項目を設定し,世代・地域・年収等で比較を行った。
本調査の結果,自然保護活動への参加意欲と,自然環境の持続可能性への危機感の間に正の相関が認められた(r=0.48, p<0.01)。しかしながら,国内の森・里・海における自然保護活動(例:石垣島サンゴの保全活動など計10事例)に対する認知度はすべての年代において低いことが示された。また本調査において,環境保護団体の会員である回答者は72名だった。
自然保護活動への参加意欲について回答を求めた結果,60代男性が他の世代よりも有意に高く,30代女性が低いことが示された(F(9, 2990)=8.41, p<0.001)。30代女性における,自然保護活動へ参加できていない理由として,最も多かった回答は時間やお金がない、とならび「どのような活動があるのか知らない」であった。現役世代は,仕事や子育てにより時間的・金銭的に余裕が少なく自然保護活動へ参加しにくい状況にある。本調査の結果,そのような状況と併せて「自然保護活動に関する情報不足」が参加の妨げの要因となることが推察された。SDGs(持続可能な開発目標)の達成には,世界中の全ての人が自然の保護や持続可能な利用について考え,行動していく事が必要であり,今回得られた視点を活かし,活動の浸透を進めていきたい。