| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) J01-11 (Oral presentation)
亜熱帯海洋島である小笠原諸島には固有種が多いが,外来種の影響で存続が困難になりつつある種も少なくない.他方で外来種でなく在来植物の繁茂で実生の加入が困難になっているように見える固有種もある.人間の影響がない時代においても,多くの新たな種が移入を続けて継続的に島の生態系が変化し,そのような変化を続ける生態系の中で多くの固有種が分化してきたと考えられる.アゼトウナ属の低木や(ユズリハワダン,ヘラナレン,コヘラナレン),クロキ属,トベラ属などは単系統であるため1回のみの移入と考えることもできるが(初期に複数回の移入があって交雑した可能性もあるが,少なくとも最近の移入はない),フヨウ属では固有種テリハハマボウの祖先であるオオハマボウが移入して分化したあと,再度オオハマボウが移入し,2回の移入が起きたと考えられる.Ito(1998)はアゼトウナ属やクロキ属,トベラ属が本土・琉球・台湾などの集団から分かれたのが200万年~300万年前で, 10万年から50万年くらい前に島内の種どうしが分かれたと推定した.固有種であるホルトノキ属やタブノキ属,エノキ属のほか,広域分布種のモクタチバナやツルダコ,アカテツなども含めて本土・琉球・台湾などの集団との分岐年代がわかれば,小笠原に森林生態系が成立してきたころの様子を再現できるかもしれない.この研究では種の生態特性から群集を再現する方法により,島への移入シナリオに沿った群集の組成や優占度と地形的な分布パターンの時代的な推移の再現を試みる.