| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) L01-02 (Oral presentation)
個別認識を行う際の重要な要素として、人間においては、視覚的に顔の情報を得るということがある。この顔を認識する方法については、認知能力が新皮質回路に依存しており生得的であるもしくは、認知能力は学習により得られた専門知識であるという2つの考えが存在する。しかしながら、個体を識別するためには新皮質が必要であるとされてきたにもかかわらず、新皮質を持たない単純な構造である魚類において個別認識を行うことが明らかになり、認知能力は学習により得られた知識であると思われる。
魚類の学習については、ヒメダカにおける群泳行動の発達に及ぼす隔離飼育の影響の研究があり、同種間での隔離飼育魚と集団飼育魚の群れへの誘引性に、差がないことが分かってきている。しかし、異種間で隔離飼育魚と集団飼育魚の群れへの誘引性の有無が分かっていない。そこで本研究ではヒメダカとネオンテトラを用いることによって、異種認識に対する影響を調べることにした。実験方法としては孵化後60日以上経過したヒメダカを、水槽で集団飼育したもの、シャーレで隔離飼育したものを、それぞれシャーレに収容し、集団飼育のネオンテトラ5匹と混泳させ撮影する。それぞれ5分、10分、20分、30分、60分の状態を確認する。隔離飼育のメダカをネオンテトラが遊泳しているシャーレに収容した場合、自身を同種であると学習して行動するのか、異種であると学習して行動するのかを調べた。その結果集団飼育のヒメダカはネオンテトラの群れに近づくことはなく、隔離飼育のヒメダカは始め集団に寄り付かず、時間が経つにつれ近づくようになったが最終的には単独で行動するようになった。これは、ヒメダカが自身を同種であるとして学習して行動していることを示している。