| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) L01-04 (Oral presentation)
なわばり雌が巣を持つ複数の雄を囲って繁殖する古典的一妻多夫の例は鳥類では少なくないが、魚類での確実な報告例はない。我々はこの一妻多夫が示唆されているカワスズメ科魚類Julidochromis marlieriをタンガニイカ湖の個体群で潜水調査した。その繁殖行動から、約20x20m2の方形区に14の古典的一妻多夫が確認された。それぞれの繁殖単位では最大サイズのなわばり雌が複数の巣でそこにいる雄と繁殖した。複数の巣の仔魚と繁殖個体の標本3組で血縁関係を調べたところ、そのすべてで雌は縄張り内の複数の巣にその雄と産卵していることが検証できた。また、それ以外の繁殖においても雌は捕食者から巣の仔魚を防衛していることが観察され、これはほとんどの繁殖で雌は縄張り内の複数の巣に産卵していることを強く示唆している。大きな雌の孕卵数は150卵にも達し、このクラッチを複数の巣に産み分けることで、卵と仔魚の生存率を高めている可能性が考えられ、このことが本種の古典的一妻多夫の成立の生態的要因であることが示唆された。性的サイズ二型、雄の保護行動など性役割の逆転現象も報告する。