| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) L01-05 (Oral presentation)
多くの霊長類において、母親以外の個体(ハンドラー)がアカンボウに接触するinfant handling(以下IH)が頻繁に観察されている。IHはハンドラー、母親、アカンボウの三者の関わる行動であるが、母子の関係性がIHに及ぼす影響についてはこれまでほとんど注目されてこなかった。そこで本研究では、ニホンザル野生群において母子間関係がIHの頻度に及ぼす影響を分析した。
3年間の行動観察によって収集した24組の母子間交渉のデータを用いて主成分分析を行い、「アカンボウの活動性」、「拒否性」、「保護性」の3つの主成分を抽出した。次に、同時期に収集したIHのデータを用いて、各主成分得点がIHを受けた頻度に与えた影響を分析した。
その結果、母親との社会的親和性が低いと考えられるハンドラーによるIHの頻度は、アカンボウの活動性が低いほど、もしくは母親の保護性が低いほど高くなっており、母子間関係がIHの頻度に影響を及ぼしていることが明らかになった。
本研究により、IH研究においては母子間関係を考慮する必要性が示唆された。