| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) L02-02  (Oral presentation)

雌はなぜつがい雄に鳴きかけるのか:モズの抱卵を支える仕組み
Why do female shrikes call their mates? : The underlying mechanism supporting incubation by female parents

*遠藤幸子(東京農業大学)
*Sachiko ENDO,(Tokyo Univ. Agric.)

両親で子育てをする動物では、子育て期間につがい相手に対して鳴きかけるなどの働きかけがしばしばみられる。このような働きかけは繁殖を効率的に進める上で役立っている可能性がある。スズメ目のモズLanius bucephalusは一夫一妻であるが、抱卵はメスのみがおこなう。抱卵中、メスはつがいオスによく鳴きかける。本研究では、モズのメスによるオスへの鳴きかけが抱卵の維持に寄与することを明らかにした。長野県軽井沢町のモズの巣にビデオカメラを設置し、メスの抱卵行動と音声、オスの給餌行動を記録した。映像解析の結果、抱卵期前半にオスに対して長く鳴きかけたメスほどオスから多くの餌を得ていた。また、多くの餌を得たメスほど抱卵により長い時間を費やしていた。すなわち、メスは長く鳴くことでオスから得られる餌量を増加させ、抱卵時間を長く確保できることが示唆された。長い抱卵時間は卵の温度の安定につながり胚の正常な発達を促すと予測される。したがって、抱卵中にメスが鳴くことは彼らの繁殖成功度の向上につながると考えられる。


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