| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) L02-05 (Oral presentation)
動物は群れで移動することによって、正しい目的地に到達する機会が増加することが先行研究Hernandez-Suarez (2016)の結論である。その論文では、1次元格子空間上のモデルを考えている。各時刻tで1つの個体が無作為に選択され、この個体が確率1-θでランダムウォークに従って移動し、確率θでほかの個体が同じ座標にないときはその個体の方向へ接近する。また、同じ座標に存在するときはその場に留まる。ここで、この移動のルールに従ったモデルを協力的ランダムウォークと呼んでいる。シミュレーションでは群れのすべての個体が原点からスタートし、すべての個体が範囲(-a,a)の外側に到達したとき終了する。aを正しい目的地の座標としたとき、群れで移動する方が単独で移動するより目的地に到達しやすいことが示されている。
この論文のモデルには欠点が存在する。それはθが大きくなるにつれ、目的地が右に存在するにもかかわらず、協力的ランダムウォークによりもう一つの個体が存在する左方向に接近、または停止してしまうことである。この問題を緩和するために、2つのパラメーター α ,β (α≥β)を設定する。この2つを用い、協力的ランダムウォークにおいて、従来ではもうひとつの個体の方向へ接近、または停止していた部分について、2つの個体の座標の差がα以上であれば接近、α未満β以上であればランダムウォーク、β未満であれば離れる挙動をするように変更した。これによって、先行研究から改善した部分について考察した。
また、先行研究からの発展として1次元空間上でのシミュレーションから2次元への拡張を考えた。拡張する上で、終了条件を設定し直し、過程が終了するまでにかかった時間を計測することで目的地への到達しやすさを調査した。