| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) M01-01 (Oral presentation)
海産無脊椎動物では、しばしばその生活史が海流に流されることで受動的な移動分散を行うプランクトン幼生期と移動性が低い成体期からなる。そして、その生態学的特徴から、アワビ類を始めとした水産有用種では成体にとっての生息適地が幼生分散で接続されたメタ個体群構造を示す。本研究では、これら海産無脊椎動物の生活史・漁獲過程、生息地の空間構造を明示的に反映した数理モデルを解析することで、空間的特性とメタ個体群の存続、生態系管理に関する一般的知見を調べた。
まず、メタ個体群モデルとして良く知られるOvaskainenらによるパッチ占有モデルを利用することで、海産無脊椎動物の幼生分散による加入や漁獲による生息地の消失を表現する数理モデルをつくり、メタ個体群の存続性を評価する指標を、各パッチのパラメータの関数を成分としてもつ非負行列(景観行列に相当)の主要固有値として求めた。
次に、メタ個体群における生息地の質や漁獲圧が空間的に不均質なことが存続性に及ぼす影響を調べた。パッチごとにパラメータをランダムに与え、空間異質性をパラメータの標本分散で評価し、それと固有値の関係を調べることで、空間異質性がメタ個体群の存続性を底上げする場合と悪化させる場合、両方のケースがあり得て、それは着目するパラメータにより異なることが明らかになった。