| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) M01-02 (Oral presentation)
齢構造を持つ生物の個体数変動をレスリー行列によって表現することを考えよう。レスリー行列は、定数行列の場合には生態学の基本的なモデルとしてよく知られているが、生存率や出生率が生物の密度に依存して変化する場合にも、これまでに様々なモデルが提案されてきた。特に、密度依存性を表現するために、Ricker型あるいはBeverton-Holt型の定式化を仮定することが多い。例えば、DeAngelis et al. (1980) は、第1列目に対応した若齢の個体の生存率にBeverton-Holt型の密度依存性を入れたレスリー行列を用いて内部平衡点の安定性解析をおこない、復元速度を求めた。一方、Levin and Goodyear (1980) は、第1行目に対応した若齢の個体への出生率にRicker型の密度依存性を入れたレスリー行列を用いて、内部平衡点の詳細な安定性解析をおこなった。なお、どちらのモデルでも、対象種としてストライプドバスを想定している。また、Neubert and Caswell (2000) は、2ステージのモデルに対して4種類の生活史を考えて、 Ricker型の密度依存性が内部平衡点の安定性に与える影響について、ダイナミクスの分岐図も示しながら詳細な解析をおこなっている。さらに、Caswell and Takada (2004) は、Neubert and Caswell (2000) の結果を踏まえて、Ricker型またはBeverton-Holt型の密度依存性を入れたときの弾力性分析による比較をおこなっている。そこで、本研究では、第1行目にBeverton-Holt型の密度依存性を仮定したレスリー行列のダイナミクスを解析し、先行研究で得られている結果とはどのような違いが見られるのかを検討する。