| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) M01-03  (Oral presentation)

地域的攪乱レジームが種プールの対攪乱応答を変化させる
Regional disturbance regimes change the response of species pools to disturbance

*上原勇樹(神戸大学大学院), 瀧本岳(東京大学大学院), 丑丸敦史(神戸大学大学院)
*Yuki UEHARA(Kobe Univ.), Gaku TAKIMOTO(Tokyo Univ.), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.)

 土地利用の変化は、世界的な自然生態系および半自然生態系における生物多様性喪失の主な要因であると考えられている。特に農業景観では20世紀後半以降、耕作放棄や農業の集約化といった土地利用変化によってその生物多様性が大きく失われている。特に、土地利用変化によって引き起こされる複数の生育地間の攪乱の均質化や生育地間の移出入が妨げられる分断化は生物多様性喪失の要因として強く影響していることが先行研究によって示唆されている。しかし農業景観における生育地間の攪乱の均質化や分断化が植物多様性を減少させるメカニズムを野外観察から明らかにするためには、2つの課題がある。1つは、均質化や分断化の影響は世代交代の過程を通じて出うるため、長期的な観察が必要となることである。もう1つは、多くの場合、攪乱の均質化や生息地間の分断化は同時に起こっているため、それぞれの生物多様性に与える影響を区別することが難しいことである。さらに野外では生息地の喪失も同時に起こっていることが多く、その影響も考慮しなくてははらない。そこで本研究では、数理モデルによるシミュレーションを用いて、複数の生育地からなるメタ群集において、生育地間における攪乱の均質化と分断化が植物多様性に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。本シミュレーションでは、複数の植物種の個体群の集まりの動態を記述できるメタ群集モデル、今回はTilman(1994)のモデルを基に構築したメタ群集モデルを用いて解析を行った。
 攪乱の均質化によってγ多様性は減少する一方で、攪乱の生育地間差が維持されたときのγ多様性は分断化の影響を受けなかった。また均質化と分断化は、γ多様性を相乗的に減少させた。本研究では、生息地間の攪乱の均質化は分断化の効果を大きくさせることを明らかにした。このことは、植物多様性の維持のために攪乱レジームの多様性を維持することの重要性を示唆している。


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