| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) M01-04 (Oral presentation)
Hassell modelは広く使われている離散時間の個体群動態モデルである。このような古典的な個体群モデルはもともと個体群レベルの現象論的なモデルとして導入されたものである。しかし、これらを個体レベルの考察から導出できれば、その背景をよく理解できるようになるだろう。この観点から前の大会ではHassell modelの第一原理導出について発表した。個体群の個体が資源をめぐり競争する際、ある一定の資源量を単位として資源を取得すると仮定することでHassell modelを導出できた。この単位資源量の大きさを変えると個体間の取得資源量の不平等性の程度が変化する。導出された個体群モデルにおいて、この不平等性の程度と密度依存性の対応は直感に一致するものであった。
今回は同様の考察を2種の場合に拡張した結果について発表する。単位資源量が2種で同じ場合は2種への拡張はストレートに可能であるが、この場合は取得資源の不平等性が2種で同じ状況しか扱えない。不平等性が2種で異なる一般の場合を扱うには、単位資源量が2種で異なる状況で個体群モデルを導出する必要がある。これは1種からのストレートな拡張では行えず注意深い考察が必要である。今回このような一般の場合の種間競争モデルが導出できたので紹介する。導出された種間競争モデルに対し2種の単位資源量を独立に変えると、2種の不平等性を独立に変えることができる。このような操作により、導出された種間競争モデルの特別な場合として、コンテスト型×スクランブル型など様々な競争型の組み合わせに対する種間競争モデルを得ることができる。また、得られた種間競争モデルに対し2種が共存する条件について考察する。得られたモデルでは個体数を実数で理想化することなく整数の変数で扱っているが、このために2種が共存できるようになる状況があることについてもコメントする。