| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) M01-09 (Oral presentation)
有殻軟体動物の殻形態は規則性と多様性をあわせもつ.殻口辺縁部に炭酸カルシウムを少しづつ付加することで殻体を形成する付加成長をおこなう.例えば,多くの腹足類では外唇部で内唇部より大きく成長するため,らせん状の殻をもつ.また“異常巻”と呼ばれる非らせん形の殻をもつ種であっても,固有の形を有する場合や,一定の成長規則を示唆するものが多い.一方で,様々な環境に生息し,被食-捕食関係も多様なため,それらは多様な“巻き”パタン,殻口形状,殻装飾や色彩へと反映されていると考えられてきた.では,そうした殻形態の多様性は如何にして測られるべきなのだろうか?
腹足類の殻の巻きパタンは成長管モデル(Okamoto, 1988)によって記述できる.私はこれまで成長管モデルパラメータが一定の場合に,3DのCTデータから成長管モデルパラメータを推定する方法とRaupモデル(Raup, 1962; Raup and Michelson, 1965)を介した推定方法を開発した(Noshita, 2014).また,殻口形状と巻きパタンを組み合わせることで殻形態を完全に記述し,さらに殻口に沿った微小な成長パタン(growth vector map)も定量化できる推定方法を開発した(Noshita et al. 2016).
本研究では,非らせん状の“異常巻”の殻にも適用可能な手法を提案する.成長管モデルは殻の巻きパタンを殻口の拡大率,規格化された曲率と捩率により記述する.そのため基本的にあらゆる巻きパタンを表現することができるが,これらパラメータが成長に伴い変化する場合には推定結果が過剰適合しやすい.本研究では,規格化された曲率・捩率に関する罰則項を導入し,ロバストに各パラメータを推定する.また,成長管モデルから仮想測定データを生成し,推定の精度を見積もりをおこない,結果の妥当性を検討する.