| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
シンポジウム ME01-5 (Presentation in Symposium)
生物の多様性や環境適応能力の獲得過程は、従来の分子遺伝学研究におけるモデル生物ではアプローチできなかった現象である。このような生命現象を解明する足がかりとなってきたのが従来の非モデル生物である。近年、次世代シークエンサー技術及びゲノム編集技術が登場したことで、非モデル生物にも分子遺伝学のメスを入れることが可能となってきた。
私たちの研究室では、テントウムシの翅の斑紋やカブトムシの角に着目して昆虫における新奇形質の獲得機構及び多様化機構を分子レベルで解明することを目指している。最近、私たちは次世代シークエンサー技術及びlarval RNAi法を駆使して、ナミテントウの斑紋多型の獲得に関与した遺伝子座及びカブトムシの角形成遺伝子群を特定することに成功した(Ando, Niimi et al. 2018, Nat. Commun.; Ohde, Morita, Niimi et al., 2018, PLOS Genet.)。本シンポジウムでは、非モデル昆虫を用いた分子遺伝学的な研究アプローチの一例としてテントウムシの翅の斑紋形成とカブトムシの角形成の遺伝的基盤に関する最近の成果および今後の展望について紹介する。さらに、分子遺伝学者と生態学者との共同研究の方向性やミクロ生物学とマクロ生物との融合の可能性についても議論したい。