| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-002 (Poster presentation)
輸入穀物には多くの雑草種子が混入しており、穀物を輸入している国際貿易港では、輸入穀物からのこぼれ落ち由来と思われる外来植物が多数生育している。一般に外来種は侵入個体数が多いほど確率的に定着・拡散する頻度が高い。そのため、侵入から定着にいたる過程の調査は将来の拡散予測に重要である。しかし、非意図的に侵入する外来生物の初期侵入・定着状況の把握は難しいため、輸入穀物由来の侵入種に対して定量的な定着状況の評価はなされてこなかった。そこで本研究では、日本全国の国際貿易港周辺の植生を調査し、穀物輸入港と非穀物輸入港周辺の植生を比較し、輸入穀物由来と思われる外来種の定着状況と穀物輸入量との関係を検討した。
北海道から九州の穀物輸入港11港、非穀物輸入港10港の合計21港で春と秋に植生調査を行った。港湾の道路上に100mのトランセクトを20本設定し、その路肩1mまでの範囲で開花あるいは結実している草本を記録した。記録種数および科組成、種組成を穀物輸入港と非穀物輸入港間で比較した。また、穀物輸入港(または非穀物輸入港)への分布の偏りと、穀物への混入種子組成を調査した先行研究から算出した輸入穀物への混入率との関係を解析した。
全国的に穀物輸入港と非穀物輸入港間で種組成が異なり、地理的に近い穀物輸入港と非穀物輸入港よりも、穀物輸入港間で類似度が高い傾向が認められた。また、輸入穀物への混入率が高い種ほど穀物輸入港に分布が偏る傾向があった。輸入穀物混入種の定着頻度は北海道で低く、関東以南の穀物輸入港では高い値を示した。今後、各港の穀物輸入量および輸出国の気候条件との関係について検討する必要がある。