| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-003  (Poster presentation)

外来ザリガニの侵入歴の違いに伴う行動特性の変化
Changes in behavioral traits of an invasive crayfish associated with time since introduction

*工藤秀平(金沢大学), 北野聡(長野県環境保全研究所), 西川潮(金沢大学環日センター)
*Shuhei KUDO(Kanazawa Univ.), Satoshi Kitano(NECRI), Usio Nisikawa(Kanazawa Univ. INET)

北米原産のシグナルザリガニPacifastacus leniusculusは、捕食や競合、病気の媒介などを通じて侵入先の生態系に甚大な被害を与える侵入種である。これまでに、日本に導入されたシグナルザリガニは3つの創始集団(北海道、長野、滋賀)から構成され、うち北海道由来の集団が近年分布域を拡大するとともに、侵入年の新しい集団ほど鉗脚(ハサミ)が大型化している(Usio et al., 2016)。大型の鉗脚を持つ個体は攻撃性が強いことが想定される。また北米での研究から、シグナルザリガニ侵入集団に複数の行動が相関する行動シンドロームの存在が確認されている。本研究では、室内実験を通じて、「侵入年の新しい集団ほど攻撃的で活発である」という仮説を検証した。創始集団の一つである北海道摩周湖(1930年導入)と、二次侵入集団である北海道然別湖(1993年定着)、北海道洞爺湖(2005年定着)、長野県片桐ダム湖(2010年定着)の4つのシグナルザリガニ集団を対象として行動実験を行った。最初に、各集団の攻撃性を明らかにするため、侵入集団ごとに体サイズがほぼ等しい2個体を水槽に入れ、一定期間の順化後、5秒ごと10分間の対戦行動と接近数(両者の距離が1個体長以下になった回数)を記録した(実験1)。次に各集団の活発さを明らかにするため、各個体の初めて見る餌(ニンジン)の消費量を測定した(実験2)。結果、対戦行動や、接近数、活発さといった行動形質は、4集団間の比較では差が不明瞭であったが、創始集団と二次侵入集団の比較ではいずれの行動形質も二次侵入集団で高い傾向が認められた。また、二次侵入集団では攻撃性と活発さが正の相関を示し、特にこれらの行動相関は然別湖集団で顕著であった。以上より、日本に導入されたシグナルザリガニは、二次侵入に伴い攻撃性や活発さといった行動形質が変化したと考えられる。


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