| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-004 (Poster presentation)
日本の河川内において高次捕食者である魚類のウナギ、及びナマズは現在共に減少しており、その空白となる生態的地位へのチャネルキャットフィッシュなど高次捕食者である外来魚の侵入・増加が危惧されている(片野ほか 2004)。本種は先行研究より、生息場所やその餌料環境によって利用する餌を柔軟に変えること(Bailey and Harrison 1948・Hubert 1999)、外来種として在来生態系に影響を与える恐れがあること(Ligas 2007)が指摘されており、我が国では特定外来生物として指定され、生態解明が急務とされている(環境省 2005)。そこで本研究では、奈良県布目ダム及び下流河川にて、生物の生態を知るうえで重要とされる食性調査(Fabre 1913)を本種に対して実施した。調査期間は2017年6月から2019年12月までとし、釣り等により本種を始めとする魚類を捕獲した。魚類サンプルより得られた胃内容物より個体数と重量(1mg単位)を計測し、個体数比(%N)、重量比(%W)、出現率(%F)を求め、餌料重要度指数(IRI)を算出した。また、魚類サンプルの筋肉片の一部を切り取り、送風式乾燥機(SANYO MOV-112F)で乾燥させ、メノウ乳鉢を用い粉砕した。粉砕した粉末にクロロホルムとメタノールを体積比2:1で混ぜた混合液を加え、脱脂処理を行い試料とし安定同位体比分析にかけた。安定同位体比分析は京都大学生態学研究センターにて実施した。
その結果、布目ダムでは本種の未成魚が多数生息しており、IRIについては、陸上由来である餌資源の爬虫類、植物、陸生昆虫の値が高く、それらの大半は岸際の河畔林からダム湖水面へ供給されたと考えられ、布目ダムの本種は水面付近を餌場として利用している可能性が示唆された。 布目川では本種が2017年11月以降ほぼ採集できず目視で確認する機会も減少し、布目川にて本種の定着は困難であると考えられた。また、安定同位体比分析の結果から、下流河川において、本種が高次捕食者である、在来種であるナマズ、ギギと競合関係にある可能性を示した。