| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-007 (Poster presentation)
徳之島では野生化したネコによる希少種被害が問題になっている.先行研究では,人間由来の餌資源が,野生化したネコの個体群を支え,在来の希少種への影響を助長させることが示唆されている.つまり,徳之島のネコ問題には人間が重要な一役を演じていると言える.地域住民の協力を得るためには,まず住民の餌やり行動や,ネコ被害・ネコ管理事業に対する意識の背景要因を解明することが必要となる.本研究では,徳之島将来の意思決定者になる中高生を対象にネコ問題に関するアンケート調査を行った.餌やり行為の裏にある要因を明らかにするために,改良した社会心理学的階層構造モデルを構築し,構造方程式モデリング(SEM)を用いて分析を行った.
アンケートの回収率は,全島の中高生(1255人)の92.6%(1162人)であった.ノラネコや放し飼いネコへの餌やり頻度について,ネコ飼育者とネコがネズミ・ハブ防除に役に立つと思う人が高い正の貢献をした.ネコ好きかどうかは餌やり頻度へほとんど貢献がなかった.これは,放し飼いが多いのか,屋外で自分のネコに餌をあげる時に,誘引されて来たノラネコの方にもついでにあげるかの2つの理由が考えられる.したがって,室内飼育の徹底化が非常に重要だと言える.ネコによるネズミ・ハブの防除への期待で餌やりをしている人の高い餌やり頻度は,徳之島の基幹産業が農業・畜産業である現状を反映している.今後,ネズミ・ハブ個体数抑制効果の検証と,ネコを代替できる新たな持続可能な手法の開発が求められる.
対象者の若者は親等の影響を受けていることを考えられるので,ネコ飼育者と農業・畜産業従事者向けの啓発が重要であると言える.また,生態学的被害の認識は殺処分の賛成へ有意な貢献が見られなく,生活面の被害(健康,衛生面等)を認識しているほど,ノ(ノラ)ネコの殺処分に賛成的になる結果となった.生活面の被害の実態把握・啓発が重要であることが示唆された.