| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-010 (Poster presentation)
近年、島嶼生態系においてノネコが希少種の脅威となっている。徳之島では、野生化したネコによるアマミノクロウサギなどの希少種への影響が懸念され、2014年度よりネコの捕獲事業が開始されている。森林で捕獲されたネコは便宜上“ノネコ”として区別され、施設に収容し新たな飼い主を探す取り組みが行われている。一方、集落周辺で捕獲されたネコは“ノラネコ”と便宜上区別され、不妊化手術ののち、希少種を捕食しないという前提で、野外に再び戻すTNR(Trap, Neuter and Return)が実施されている。ネコ管理が始まってから5年が経過しようとしており、その効果の評価をすべき時期にきている。本研究では、上記の管理方法の効果の検証に向けて、希少種の回復およびネコの移動パターンを評価することを目的とした。
アマミノクロウサギの個体数変動を見るため、2014−2018年度に行われたナイトセンサスのモニタリング記録を解析した。2014年度以降、アマミノクロウサギの出現頻度は増加し、その増加率は前年度の“ノネコ”の捕獲数に左右される傾向が見られた。アマミノクロウサギの増加率は空間的に異なっており、集落に近づくほど増加率は低かった。ネコの行動パターンを調べるため、林道に沿って計45台の自動撮影カメラを設置し、4匹のTNR個体にGPS首輪を装着し追跡をした。その結果、集落から恒常的にネコが森林内に林道を使って出入りしていることが明らかになった。
以上の結果は、下記の2点を示唆している。①“ノネコ”対策の効果が、在来種の回復という成果を出しつつあること。②“ノラネコ”は森林に侵入し続けており、希少種を捕食しないという前提で進められているTNRであるが、“ノラネコ”も希少種を捕食していることが十分に考えられること。このことから、“ノラネコ”も“ノネコ”と同様に希少種捕食のリスクを考慮した管理方法が必要である。