| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-011 (Poster presentation)
魚食性外来魚(特にオオクチバス、ブルーギル)が本邦に移入されて以降、分布を拡大し生物群集に影響を及ぼしてきた。特に池・沼では在来魚が消滅し、単純な生態系になる現象が見られている。あるいは小型在来魚が捕食され大型種群のみが残存している。しかし、ため池における調査にて特定の小型在来魚が外来魚と共に生息していることが分かった。魚類は形態を変化させ環境に適応することが知られている。これらの種も形態を変化させ環境に適応し共存していると仮説を立て、ため池における魚類の各形態について精査し要因を考察した。滋賀県草津市、栗東市、野洲市に点在するため池計15ヶ所を調査地とし、2018年9月15日から11月10日の間で調査を行った。ため池の生物相調査にはモンドリと投網を用いた。各ため池で採取した魚類は、同定を行い全長、体長、体高、湿重量、眼径、尾柄長など15項目を測定した。8科16種2642匹の魚類、甲殻類、両生類が採取でき、外来魚が生息していたため池9ヶ所中、小型在来魚が生息していたため池は4ヶ所であった。解析には、調査で多くの個体が採取できたモツゴ、ブルーギルを用い、ため池における各魚類の形態を共分散分析(ANCOVA)にて比較した。採取できたモツゴのほとんどが孵化して1年のものだった。モツゴの形態を各ため池ごとに比較した結果、体高、眼隔、尾柄長などの形態で差が見られた。特に眼隔、尾柄長は抽水植物が繁茂していたため池で大きくなり、空間構造の複雑な生息場に適応したと考えられる。ブルーギルは採取できた個体のほとんどが成熟個体であった。ブルーギルの形態を各ため池ごとに比較した結果、体高、眼径などの形態で差が見られ、眼径の大きさは餌資源の密度や濁度が影響していると考えられた。本研究では、外来魚と在来種との関係は見られなかったが生息環境に合わせて形態を変化させていることが示唆された。