| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-012 (Poster presentation)
【はじめに】日本の河川堤防法面は、治水・利水・環境面からチガヤを主体とする植生が望ましい。しかしながら、九州の河川堤防においては、外来種であるセイバンモロコシ(Sorghum halepense (L.) Pers.)の蔓延が問題となっている。本種は地中海沿岸地域原産の多年生草本であり、草丈が約2 m程度に成長するため、繁茂すると河川巡視や防犯上の問題を引き起こす。先行研究において、土壌の酸性が強くかつ有効態リン酸が少ない環境には外来種が侵入しにくく、在来種主体の植生が成立しやすいという報告がある。セイバンモロコシの蔓延にも土壌の化学特性が関わっているのであれば、土壌の化学特性を制御することで本種の蔓延を防ぐことができる可能性がある。そこで本研究では、本種の蔓延に土壌の化学特性が関わっているか明らかにすることを目的とした。
【材料と方法】調査地は、本種が繁茂する筑後川水系の宝満川河川堤防法面を選定した。2018年の春と夏の2回、セイバンモロコシの生育地と非生育地で植生調査および土壌採取を行った。採取した土壌試料は、風乾後、pH(H2O)、pH(KCl)、pH(NaF)、置換酸度、有効態リン酸(Bray Ⅱ P)、電気伝導度(EC)、交換性陽イオン(Na、K、Ca、Mg)を測定した。
【結果と考察】pH(NaF)と交換性陽イオン(Na、K、Mg)はセイバンモロコシの生育・非生育と有意な相関関係は認められなかった。一方、土壌酸性のパラメータ(pH(H2O)、pH(KCl)、置換酸度)、電気伝導度、有効態リン酸は、セイバンモロコシの生育・非生育と有意な相関関係が認められた。すなはち、セイバンモロコシはpH5.5以上でかつ有効態リン酸が80 mg P2O5 kg-1以上の富栄養的な土壌に主に分布していた。このことから、河川堤防法面の土壌を酸性が強くかつ貧栄養的に管理することで、セイバンモロコシを排除しつつ、理想的なチガヤ型の植生に誘導できる可能性が示唆された。