| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-013 (Poster presentation)
昨今、人の生活圏の安全性や自然生態系の破壊を巡って外来種問題が深刻化している。そのほとんどが非意図的な導入によるため侵入経路を特定しにくいうえ、なかでも種数が多く体サイズの小さい外来昆虫の侵入については、分類に詳しい専門家であっても目視ベースで迅速かつ正確に把握することは難しい。そこで、野外調査が簡便でDNAベースで正確な同定が行える環境DNA分析手法に着目した。環境DNA分析はこれまで主に水環境において用いられてきた生物モニタリング手法であるが、これを陸上土壌環境に適用することによって陸生外来昆虫の生息を実証的に検出し、定着・繁殖の有無を判定する有効なツールとなると考えた。本研究では、まずアルゼンチンアリを対象に特異的な検出系の開発を行った。その後、野外サンプルからのDNAの検出を試み、土壌サンプルからのDNA抽出方法を検討すると同時に、従来的目視調査のデータとDNAの検出結果を比較した。また、アルゼンチンアリの巣や行列からの距離とDNA量に関係性があるかを調べた。アルカリ抽出を用いた環境DNA抽出を行ったところ、比較的大容量の土壌サンプルからDNAを抽出することに成功した。野外サンプルからアルゼンチンアリ由来のDNAが検出され、その結果は当該地域における本種の生息に関する従来的目視調査のデータと一致していた。また、土壌サンプルをアルゼンチンアリの巣からの距離、また、行列からの距離を変えて採取・分析した結果、距離とDNA量との間に、一般化線形混合モデル解析では有意な相関は見られなかったものの、採集地点が巣から離れるほどDNA量が減少する傾向がみられた。以上のように、本研究において環境DNA手法の陸上土壌環境への適用に成功したことにより、環境DNA手法が水環境に棲息する生物のみならず、陸生生物の検出においても信頼性の高いツールになることが示された。