| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-014  (Poster presentation)

伊豆諸島三宅島における国内外来種サツマゴキブリの分布様式
Distribution pattern of invasive species Opisthoplatia orientalis in Miyakejima island, Izu islands.

*東谷一熙(筑波大学), 上條隆志(筑波大学), 長谷川雅美(東邦大学)
*Kaduki HIGASHITANI(University of Tsukuba), Takashi Kamijo(University of Tsukuba), Masami Hasegawa(University of Toho)

サツマゴキブリは、日本各地に国内外来種として侵入している屋外性昆虫である。伊豆諸島では国内外来種であるニホンイタチなどの餌資源となり、間接的に在来種への圧力を強めると懸念されている。しかし、本種の生育状況に関する基礎知見は不足している。そこで本研究では、三宅島を対象として、本種の分布調査データを用いて本種の分布に影響する環境要因を明らかにすることを目的とした。
三宅島全域を主に林道沿いに歩き、サツマゴキブリの位置をGPSで記録した。また、ニホンイタチの糞についても本種の有無を確認した。分布データは、標高データ(国土交通省 国土数値情報)と植生データ(環境省 生物多様性センター)とともに、QGISを用いて100m×100mのメッシュデータに統一した。標高および植生タイプ(高木群落・低木群落・市街地・耕作地・荒原-裸地・その他)を説明変数として、GLMによる本種の分布モデル(ニホンイタチの糞からのデータを除く)を作成した。なお、植生タイプについては、荒原-裸地を基準とした。さらに、作成した分布モデルから、三宅島における100m×100mメッシュの潜在分布確率図を作成した。
 調査と解析の結果、踏査メッシュ数は1027地点、確認地点は生体と死骸が164地点、糞からの確認が43地点であった。モデル選択の結果、標高と植生タイプを用いたモデルがベストモデルとなり、標高が負の効果を、植生タイプでは耕作地と高木群落が荒原-裸地に対して有意な正の効果を及ぼした。
 以上から、三宅島において本種は、低標高域の集落域(耕作地と市街地)や森林に分布傾向があり、特に耕作地で分布確率が高いことが示された。そのため、集落域の拡大により分布域が拡大する可能性が考えられる。また、ニホンイタチの糞中に出現したことから、餌資源として利用されていることも確認された。今後は、より詳細な分布要因やニホンイタチ等の餌資源としての重要性を検証することが重要と考えられる。


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