| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-021 (Poster presentation)
北米原産の外来種ハリエンジュ(Robinia pseudoacasia)は、繁殖力が強く、生物多様性や河川管理等に大きな影響を与えていることが指摘されている。本来は自然性の高い山地渓畔林・河畔林の周辺でも砂防緑化材として本種の導入が行われてきたが、在来生態系への影響が懸念される。そこで本研究では長野県に位置する三峰川水系山室川の山地渓畔林・河畔林におけるハリエンジュ優占群落の現状を把握し、在来群落への影響を検討することを目的とした。
ハリエンジュの分布調査と山地渓畔林・河畔林の構成植物の記録を行い、林冠を本種が優占する7プロット(P)と在来種が優占する8プロット(N)を選出し植生調査を行った。高木・亜高木・低木層では15m×10mのプロットで、草本層では同プロット内に1m×1mのサブプロットを4箇所設置し出現種、被度、群度、群落高、各階層の高度、草本層の植被率を測定、記録した。また土壌硬度、斜面方位、傾斜角度の測定、周辺の河川構造物を記録した。
構成植物の記録では95種、植生調査では128種の植物が確認した。低木層以上の出現種の被度百分率に基づき、TWINSPAN解析を行った結果、全15プロットは6群落型(P1・3・4型、P2・6型、P5・7型、N1・2型、N3・4・5・6・8型、N7型)に分類された。P5・7型の草本層の植被率が他の多くの群落型より有意に高く、1年生草本の優占が多かった。出現種数や土壌硬度はPとN間で有意差は無く、植被率ではプロットPが有意に高かった。
出現植物種や被度から群落型N3・4・5・6・8型やN1・2型では自然度が高く、P5・7型では低いと考えられた。プロットPでは林冠をハリエンジュが優占することで、下層の低木や草本の種類や植被率に影響したと考えられた。今後、ハリエンジュは本河川で分布拡大し、山地渓畔林・河畔林の更なる群落構造の変化が懸念された。