| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-027  (Poster presentation)

コドラート調査は稚樹群集の構造をどの程度代表するか? 全数調査との比較
To what extent does quadrat survey represent sapling community structure in a temperate forest? Comparison with census.

*板橋朋洋(秋田県立大学), 野口麻穂子(森林総合研究所), 松下通也(森林総合研究所), 中川弥智子(名古屋大学), 太田和秀(秋田県立大学), 齊藤哲(森林総合研究所), 星崎和彦(秋田県立大学)
*Tomohiro ITABASHI(Akita Pref. Univ.), Mahoko Nuguchi(FFPRI), Michinari Matsushita(FFPRI), Michiko Nakagawa(Nagoya Univ.), Kazuhide Ohta(Akita Pref. Univ.), Satoshi Saito(FFPRI), Kazuhiko Hoshizaki(Akita Pref. Univ.)

 樹木の個体群構造を調査するには、一定の面積に含まれる樹木を記録するのが一般的である。中でも、未成熟なステージである稚樹や実生は本数が多いため、しばしばコドラート法によって省力的にサンプルされる。しかし、そのサンプリングがどれだけ実際の群集構造を代表しているかについて、これまであまり注意を払われてこなかった。
 そこで岩手県奥州市カヌマ沢渓畔林試験地(3.2 ha)にて、胸高直径1 cm以上の全ての稚樹を記録し、そのデータセットから異なる位置や面積のコドラートによってサンプルするシミュレーションを行った。その結果サンプルされる稚樹の種数と種の優占度は、コドラートの位置と面積によって変動した。一方で、サンプルされる稚樹の本数はコドラートの位置や面積によって変動しなかった。これは、種ごとの地形依存性などに起因する水平分布の偏りを反映したサンプリングバイアスであると推察される。
 従ってコドラート法を用いたサンプリングは、ある種のみに着目するか種をプールした研究には有用であるが、水平的な分布の偏りがある場合にバイアスがかかる可能性があるため、多様性や種間関係に着目した研究に用いるには注意が必要である。


日本生態学会