| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-034 (Poster presentation)
全球スケールで気候変動が起こっており,平均気温の上昇,夜間気温の上昇や降水量の変化が確認されている.特に,夜間温暖化が進行するスピードは日中温暖化よりも速いと言われ,日夜の非対称的な気温変化は生態系に差異的な影響を及ぼしている.これまでの研究では,気候変動が生態系の生産量,安定性や機能形質などに影響することが示されてきた.しかし,その多くは気候変動の複合的な側面を考慮していない.自然界で実際に起こり得る事象を考慮するためには,複数の気候変動の組み合わせによる操作実験が必要だと考えられる.
草原生態系は,炭素貯蓄や家畜への資源提供の場として重要な役割を果たしてきたが,気候変動により生産性や種構成が変化している.これに加え,土地利用の変化による過度の放牧圧など人為的攪乱も強く受けている.過放牧によって家畜が好む種が選択的に消失し機能的多様性が損なわれた多様性は,外部影響を緩和する働きが低下することで気候変動の影響を強く受ける可能性がある.
草原生態系における生産量の変化は,家畜の生産や二酸化炭素収支を介した大気へのフィードバックに関わる重要な要素であるが,気候変動と放牧による多様性変化が草原の生態系機能へ与える影響を同時に考慮された研究はまだ少なく,攪乱間の相互作用は明らかにされていない.
気候変動と多様性変化が生態系機能に与える影響を明らかにするため,本研究ではモンゴル東部の草原において操作実験を行った.2017年,禁牧柵内に放牧圧を考慮した種数操作(2,4,8種)と,OTC(Open Top Chamber)を用いた3パターンの気候変動操作(日中加温,夜間加温,降水量増加)を組み合わせた12パターン,計36個のプロットを設置した.2018年にプロット内部の二酸化炭素収支や現存量を測定し,生態系機能を定量化した.この実験により,草原生態系が気候変動から受ける影響,およびその影響に対する生物多様性の効果を検証する.