| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-038 (Poster presentation)
森林の種多様性維持メカニズムの1つに、樹木と菌類との相互作用がある(Plant-soil feedback)。これまでに、成木近傍における同種実生の更新成功は菌根菌タイプで異なることが示唆されており、アーバスキュラー菌根(AM)菌と共生する樹種では土壌病原菌により定着は阻害されやすく、外生菌根(ECM)菌と共生する樹種ではその傾向が弱いことが報告されている。しかし、このような距離依存的な実生定着は室内試験によって推定されたものであり、環境のヘテロ性が大きい野外で実証された例は少ない。2015-2017年、東北大学フィールドセンター二次林において、AM樹種(ウワミズザクラ、ミズキ、イタヤカエデ)、およびECM樹種(ブナ、ミズナラ)を対象とした交互播種試験がギャップ区・林内区で行われ、野外環境下でも菌根菌タイプと実生の距離依存性の間に関係がみられた(佐々木ら第65回生態学会発表)。しかし、菌根菌感染の実生定着への関与、また、その関係に対する光環境の影響は未解明である。本研究では、それぞれの菌根菌タイプ(AM vs. ECM)の樹種において、距離依存的な定着への菌根菌感染の影響と、その光条件による違いを解明することを目的とした。上記試験の生存個体を対象とし、AMおよびECM菌根菌類の感染率を測定した。また、実生死亡率および個体重と菌根菌感染率との関係、それに対する光条件の影響を一般化線形混合モデルで解析した。AM樹種では、菌根菌感染率に関わらず同種成木近傍での病気による死亡率は高かったが、ギャップでのみ菌根菌感染率が増加すると個体重も増加した。一方、ECM樹種では、菌根菌感染率と個体重に関係は見られなかったが、ECM樹種近傍での菌根菌感染率が高く、病気による死亡率は低くなった。これらの結果から、成木近傍での同種実生においては、AM樹種ではギャップでのみ成長が促進され、ECM樹種では光環境に関わらず菌根菌感染によって病害が抑制されることが示唆された。