| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-040  (Poster presentation)

神通川河口域の耕作放棄地に成立した河畔林の構造
Structure of a riparian forest established in the abandoned crop field of the Jinzu River estuary

*TRANTung Dinh, 和田直也(富山大学)
*Tung Dinh TRAN, Naoya WADA(University of Toyama)

岐阜県高山市の川上岳に源を発し、富山県を経て日本海に注ぐ神通川は、幹川流路延長120 km、流域面積2,720 km2の一級河川である。流域の土地利用は、上中流部に広がる山地が約87%を占めているのに対して、下流部に広がる水田・耕地が約7%を占めている。下流部の河川敷には、耕地や河川氾濫後に成立した河畔林がモザイク状に見られる。調査地に選定した河口域左岸の河川敷は、かつて水田として利用されていたが、2005年3月に放棄され、それ以降利用されていない耕作放棄地である。現在、富山県では、河川敷植生の森林化が進み、防災面では河川管理上の課題になっている一方、遷移の進行による野生動植物への生育生息地拡大の効果等、人と野生生物との接点の場としての、あるいは魚付林としての河畔林を、今後どのように管理すべきか注目を集めている。河畔林を適正に管理していくためには、遷移の状況や河畔林の構造を正確に知る必要がある。本研究は、水田耕作地放棄後13年を経過して成立した河畔林の構造を、現地での地上調査とドローンを用いた写真測量により明らかにすることを目的として実施した。2018年3月、本調査地に1 haの方形区を設定し、その中に含まれる全ての個体(樹高 > 2 m)について胸高直径と樹高を計測した。同時に、落葉期と着葉期にドローン(DJI社製Phantom 4 Pro)を用いて画像を取得し、その画像を用いて写真測量を行い、各個体の位置や樹高、林冠面積を計測した。その結果、株数で1164本、個体数で423本の樹木を確認できた。個体数ではオニグルミが最も多く、シロヤナギ、ヤマグワ、カワヤナギの順に優占していた。これらの樹種は、樹高や胸高直径のサイズ分布、個体当りの株数、空間分布にも違いが見られ、異なる種子散布様式や撹乱に対する再生力及び耐性がこのような違いを引き起こしている可能性が考えられた。


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