| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-044 (Poster presentation)
1.はじめに
渓畔域では、数十年単位で発生する大規模な土石流攪乱や、毎年発生する融雪洪水・増水など、頻度・サイズ・強度の異なる多様な攪乱体制がみられる。特に土石流など大規模攪乱跡地では、渓畔林の林冠構造が、先駆樹種であるヤナギ類・ケヤマハンノキから、遷移後期樹種であるカツラ・サワグルミへと遷移していくことが示唆されている。渓畔林の樹木の遷移や生態的特性の解明を目的とした研究はなされてきたが、林床植生の動態は明らかにされていない。本研究では、攪乱履歴の異なる林分で林床植生の種組成を比較し、渓流攪乱が林床植生の種組成に与える影響と季節変化を検討した。
2.調査地・方法
調査地は佐渡島岩谷口に位置する大河内沢の標高約400-450mの渓畔域である。調査地の渓流は2つの支流に分かれており、十数年前に土石流が発生した渓流と、土石流が60年以上発生していない安定した渓流である。現在、土石流によって形成された堆積地にはオノエヤナギとケヤマハンノキの若齢な林分が成立し、土石流が発生していない渓流では、サワグルミの大径木が高齢な林分を形成している。両林分において、攪乱頻度や強度が異なる立地で植生調査を行った。
3.結果・考察
土石流のあった若齢林では春から夏にかけて優占種がスギナからアカソへ変化していた。安定した高齢林では春夏ともにクサソテツやジュウモンジシダなどのシダ植物が優占し、その下層ではコチャルメルソウが優占していた。若齢林と高齢林では、林床植生の種組成に違いがみられ、大規模攪乱後の経過時間に伴なって林床植生が遷移していることが示唆された。また、両林分の種組成の違いは春に顕著であり、高齢林では春植物であるニリンソウやキクザキイチゲ、エゾエンゴサクがみられたが、若齢林ではあまりみられなかった。春植物が定着するためには、地形が長期間安定している環境が必要であると考えられる。