| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-047  (Poster presentation)

中間温帯林におけるスズタケの一斉枯死が森林土壌および樹木の成長に与える影響
Effects of simultaneous death of dwarf bamboo on soil and tree growth in  Abies-Fagus forests

*朝日莞二(名古屋大学), 星野大介(森林総合研究所), 西村尚之(群馬大学), 富岡利恵(名古屋大学大学院), 中川弥智子(名古屋大学大学院)
*Kanji ASAHI(Nagoya Univ.), Daisuke Hoshino(FFPRI), Naoyuki Nishimura(Gunma Univ.), Rie Tomioka(Nagoya U.), Michiko Nakagawa(Nagoya U.)

 植物の成長には土壌水分・養分が必須であるが、森林などの自然条件下では土壌中の養分が欠乏しやすく、樹木の成長は一般に制限されていると考えられる。また林床にササが密生する森林では、樹木とササとの間に土壌水分・養分をめぐる競争が起こっている可能性がある。稀に起こるササの一斉開花・枯死に伴うササの自然消失を捉えることができれば、ササが森林土壌および樹木の成長に与える影響を評価できる貴重な機会となる。愛知県北設楽郡段戸保護林(以下、段戸)および愛知県豊田市面ノ木原生林(以下、面の木)一帯では、2017年にササの一種であるスズタケの一斉開花・枯死が確認された。
 そこで本研究では、段戸においてスズタケの一斉枯死前後(2016、2017、2018年)の土壌養分量(C、N、Ca、K、Mg、Na、P量)および樹木の幹肥大量を比較することで、スズタケ一斉枯死後に土壌養分や樹木の成長量が増加するという作業仮説の検証を目的とした。また、土壌水分については、面ノ木で2018年に採取した土壌を用い、スズタケの生育・枯死状況に違いがある地点間で含水率を比較した。幹肥大量は、段戸、面ノ木でそれぞれ継続的に行われてきた毎木調査データと、2018年に行った毎木調査のデータから算出した。
 その結果、スズタケの被覆・枯死と土壌含水率に関係は見られなかったが、土壌養分はスズタケの枯死後に有意に増加した。交換性塩基、可給態リン酸が枯死開始時期の2017年にすでに増加していたことから、これらの増加はスズタケ枯死に伴う土壌養分の利用の消失が原因だと考えられる。一方、スズタケの枯死前後で樹木の幹肥大量に差はなかった。養分の増加量が樹木の幹肥大に影響を与えるには不十分であったか、幹肥大に反映されるにはタイムラグがあるのかもしれない。スズタケ由来のリター分解により、土壌養分量は今後も変動する可能性が考えられ、樹木の成長量とともにより長期での追跡調査が必要である。


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