| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-052 (Poster presentation)
はじめに:海浜植生は汀線から内陸にかけて成帯構造(ゾーネーション)を作る。しかし、近年、全国的に都市化、海岸浸食等によって成帯構造が寸断され、海浜植物の生育地が失われている。道南地域は北海道の中でいち早く開発が進んだ地域で、人為的影響の強い海浜が多い。そこで、これまで調査例が少ない道南地域の海浜植生の種組成を調査し、成帯構造と都市化の関係について調査することを目的とした研究を行った。
調査地点:道南地域(函館市、北斗市、森町など8市町)にある砂浜海岸26測線(コドラート数:計468箇所)
調査方法:ベルトトランセクト調査(2 m×2 mの測線を汀線近くの植生出現地点から内陸に向かって引き、出現する植物種とその被度を記録)のほか土壌含水率、粒径などをあわせて調査した。室内ではQGISで各測線に500 mバッファを作成し、土地利用細分メッシュデータを用いて、海浜周辺の都市的土地利用の変遷とその割合について調査した。
分析方法:TWINSPAN(二元指標種分析)を用いて得られた植生資料を分類し、指標種分析で植生タイプごとの指標種を検討した。
結果及び考察:コドラート全体の分析がまだ終了していないが、初秋までに調査が終了した195箇所のコドラートで分析を行ったところ、TWINSPANによって7つの植生タイプに分類された。それらは、オカヒジキ帯、ハマニガナ-ハマニンニク帯、コウボウムギ-ハマボウフウ帯、ウンラン-ハマナス帯など7タイプである。これらの植生の成帯構造は、150~170 mの比較的広い幅の海浜が残存している場所では確認されたが、市街地に近く都市的土地利用が70%を越える20~76 mの幅の狭い海浜では見られず、ウンラン-ハマナス帯などの半安定帯と安定帯の境界付近の植生帯が欠落する傾向が見られた。本研究ではウンラン-ハマナス帯などに生育するウンラン、ハマナス、センダイハギなどが、道南地域における海浜植生の成帯構造の連続性指標として適切と考えられた。