| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-053  (Poster presentation)

水域を主な生息地とする鳥類の移動経路としての都市河川の利用実態
Usage of urban rivers by waterbirds as pathways.

*竹重志織, 加藤和弘(放送大学)
*Shiori TAKESHIGE, Kazuhiro KATOH(The Open University of Japan)

多くの水鳥は採餌と就塒を異なる場所で行う。塒から採餌場までの移動は個体にとって重要な行動であり、水鳥の保全のためには塒、採餌場所に加えて、移動経路の確保が必要である。これらの個体は、塒から最短経路で移動するのではなく、移動の際の目印ともなり、また水鳥にとっては休息を取ることも容易な河川沿いを移動していると考えた。本研究では、冬期に東京湾沿岸で見られる水鳥を対象として、内陸の採餌場所への移動経路として河川を用いる種を明らかにするとともに、移動経路としての河川への依存度に種間で違いがあるかを検討した。
河口から約7.5kmまでの神田川(東京)沿いに14の調査定点を設けた。2017年12月~2018年3月に、各定点で15回(朝6・昼6・夜3)の調査を行い、観察された水鳥の個体ごとに行動、利用位置、移動方向を記録して以下の結果を得た。
1)記録された21種のうち、カワウ(Phalacrocorax carbo)とユリカモメ(Larus ridibundus)、セグロカモメ(L. argentatus)の3種で、河川に沿って移動した個体が多数観察された。
2)上記3種では、大半の個体が河川直上を移動していた。カワウでは観察された移動の約17%が河川への依存度が低い(河川を横切る・河川から離れる、等の)ものだったが、ユリカモメとセグロカモメにおけるその割合は約2%であった。これには飛翔コストの種間での違いが関係している可能性がある。
3)観察された移動の90%以上が河川直上のものであったカモメ科2種について、調査記録に基づき神田川における個体の分布を推定した。2種ともに河川内の特定の区間において滞留するがその場所は種により異なり、遡上距離と移動のピーク時間帯も2種の間で異なった。休息などにおける利用位置の競合を避けている可能性が考えられた。さらに、個体の移動範囲から、河川直上の構造物が移動を妨げる可能性も示唆された。


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