| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-055  (Poster presentation)

都市景観における害虫駆除サービスの定量化:artificial caterpillarを用いた検証
Quantifying pest control services in urban landscapes using artificial caterpillars

*島田翔, 吉田薫, 曽我昌史(東京大学)
*Sho Shimada, Kaoru Yoshida, Masashi Soga(Tokyo Univ.)

 近年、新たな都市の生態系サービスの一つとして「害虫駆除サービス(庭や街路樹などにおける害虫抑制機能)」が注目されている。しかし、捕食圧を屋外で計測・観察することは困難であることから、本サービスの実態は未だ不明である。そこで本研究では、artificial caterpillar(モデルイモムシ)を用いた調査手法(イモムシの模型を野外に設置し、捕食者の攻撃痕から、捕食圧を測る手法)を活用し、都市の街路樹景観における害虫駆除サービス(天敵類による捕食圧の程度)を定量化することを目的とした。
 調査は、2018年9月に都内14か所の街路樹景観(9カ所の都心のサイトと5カ所の郊外のサイト)で行った。各サイトで、60個体のモデルイモムシ(プラスチック製粘土:約30㎜×5㎜)をツツジ属植物の葉上に設置した。その際、各サイトでイモムシは、樹冠の葉と、樹冠から10cm以上低い位置の葉、の二カ所にそれぞれ30個体ずつ設置した。イモムシは設置から20日後に回収し、イモムシへの攻撃の痕跡の有無・種類(鳥、節足動物、腹足類による攻撃に分類)を記録した。
 調査の結果、設置した840個体のイモムシのうち657個体が回収され、そのうち141個体(約21%)に攻撃痕が残されていた。攻撃痕は節足動物によるものが大部分を占めていたが(114個体)、腹足類や鳥類による痕も見られた。解析の結果、節足動物による攻撃痕は、都心に比べて郊外のサイトで多くなる傾向が見られた。この傾向は特に樹冠よりも低い位置に設置したイモムシで顕著であったことから、郊外では地表性昆虫類(主に樹冠よりも低い位置で捕食を行うと考えられる生物分類群)による捕食圧が高い可能性が示唆された。本発表では、今回の知見を踏まえ、都市における害虫駆除サービスを測るうえでのartificial caterpillarの有効性や発展性について発表する。


日本生態学会