| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-060 (Poster presentation)
わが国では、人口減少やコンパクトシティ施策の推進により空き地の増加が懸念されている。従来の緑地計画は、公園や樹林地、農地等に焦点を当ててきたが、今後は、増加が予想される空き地の活用が課題になることが想定される。しかし、空き地に対する評価にどのような要因が影響するかはよくわかっていない。生態系サービスの価値評価に関する近年の研究では、評価主体と生態系サービスを産み出す自然との関係のあり方が評価に影響することが指摘されている。そのような影響は文化的サービスについて強く現れると言われているが、実証的な研究は十分に行われていない。本研究では、環境心理学などの分野で、人と周辺環境との関係性を捉える概念として研究されてきた「地域愛着」に着目し、人々の地域愛着と、空き地を含む都市近郊緑地の文化的サービス評価の関係の解明を試みた。
研究対象地として、多様な緑地環境が存在する千葉県印西市の千葉ニュータウン印西牧の原地区を選定し、地区住民へのアンケート調査により地域愛着と本地域の4種類の緑地(公園、森林、農地、空き地)についての文化的サービスの評価を求めた。地域愛着の評価には、先行研究で実証された質問項目を、また文化的サービスの評価には生態系サービスの国際共通分類(CICESv.5.1)にある7種類のサービスについて5段階のリッカート尺度での回答を求めた。その後、地域愛着の回答について因子分析により因子構造を確認した後、因子得点を算出し、因子得点と文化的サービス評価の間のSpearmanの順位相関係数を求めた。その結果、特に空き地の評価は、自然とのつながりの他、場所への依存性や地域コミュニティとのつながりとも相関がある(p<0.01)ことが明らかになった。本傾向は他の緑地ではみられず、空き地の文化的サービスの評価を高めるには従来の緑地とは異なる要因が関係していることが示唆された。