| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-062 (Poster presentation)
都市や近郊において海岸には砂浜海岸や岩場海岸、コンクリート護岸、親水石積み護岸などの多様な海岸と対応した生物群集が存在し、市民によってそれぞれの群集に適した利用が行われている。都市部において、現在市民がアクセス困難な海岸を適切に開発、開放することができれば都市住民の生活向上が見込まれる。本研究では、様々な海岸生態系に対する市民の利用についてルートセンサスにより調査し、市民による海岸生態系利用の需要を把握する。調査は、東京都市圏の中央部から西部において、都心から郊外を経て農村に至る景観傾度に沿った海岸で行った。その結果、魚釣り、遊び(砂遊びや水遊び)、生物採集の順に利用者が多く、魚釣りと生物採集の利用者は全体の53%に及ぶことから、海岸生態系への需要が大きいことが明らかとなった。最も利用者の多かった魚釣りでは、秋季にコンクリート護岸を多く利用する傾向が示され、特に高齢の男性による利用が多かった。遊びでは、初夏に砂浜海岸での利用者密度が高く、他の海岸利用と比較して女性や子供の利用が多かった。生物採集では、初夏に岩場海岸や親水石積み護岸を利用され、遊びに次いで女性や子供の利用も多かった。今回観察された傾向からは、高齢の男性の利用を促進するためには魚釣りに向いたコンクリート護岸が効果的で、女性や子供の利用を促進するには、遊びや生物採集に向いた砂浜海岸や親水石積み護岸が適当であると考えられる。今回の結果は、海岸を開発する際に目的とする利用タイプと利用者属性を定めて護岸を造成することが可能であることを示唆している。