| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-063  (Poster presentation)

都市緑地で樹木個体群は持続しているのか?
The population viability in urban parks.

*樋口桃子, 小池文人(横浜国立大学)
*Momoko HIGUCHI, Fumihito Koike(Yokohama national Univ.)

都市の公園に植栽された樹木は個体レベルで管理され,個体群として把握されることはなかった。しかし、植栽した外来樹木が都市公園内で再生産して個体群を維持・発達させた場合は侵略的外来種となり得るし(トウネズミモチなど),逆に残存して来た在来種の個体群が絶滅する恐れもある(都内のアカガシなど)。よって、質の高い都市緑地を維持するには、樹木の野生個体群管理が必要である。個体群パラメータは多数の個体の長期継続調査の結果をもとに推定されることが多いが,都市公園では絶対的な個体数が少なく,管理の面では短期的で簡易な調査法が求められる。本研究では1回の少個体数の調査から個体群の存続可能性を評価することを試みた。今回は,実生と幼樹において生育段階分布ごとの生存率を推定し,極端に低い生育段階が存在すれば個体群としての存続が難しいと判断した。強度の管理が行われている東京都心の2つの公園と,管理強度が比較的低い公園的な景観の緑地として横浜国立大学常盤台キャンパスを調査地とした。試行調査対象種は保全や防除の必要性も考慮し、外来種のトウネズミモチ、クスノキ、イチョウ、在来種のスダジイ、アカガシの5種を選択した。樹高による生育段階ごとの個体数分布と、年枝長として実生・稚樹の1年間の樹高成長速度を測定し,生育段階分布と当年実生の加入が1年間で変化しないと仮定して、生育段階ごとの生存率を求めた。その結果,外来種のトウネズミモチは都心を含む全ての公園・緑地で存続可能性が高く、蔓延防止対策が必要であると考えられた。クスノキは、管理強度の高い都心の公園では存続できないが,管理強度が低い都市緑地では存続可能であり、緑地によっては防除が必要であるとの結果になった。イチョウは、実生はみられるが死亡率が高いため野生個体群としての存続は困難で,都市緑地における在来種のスダジイも実生や稚樹が少ないため、存続は困難と考えられた。


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