| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-077 (Poster presentation)
野生動物の採餌戦略は,その動物の生存率・繁殖率に大きな影響を与えることが知られている.とりわけ,げっ歯類は,様々な生態的要因から採餌戦略が生活史に与える影響は大きいと考えられる.そこで,げっ歯類による採餌選択時の行動プロセスを明らかにするために,人工的に特性をコントロールした種子を野外に設置し,ビデオカメラを用いてアカネズミ類による採餌行動を詳細に観察した.種子選択において重要な基準であると考えられる①種子サイズ,②栄養含有量,③植物二次代謝産物,④種子重量のうち,一つの特性のみ変化させた人工種子を,それぞれの特性ごとに地点に分けて設置した.得られた動画から,種子との接触頻度,判別方法の違い,採食頻度を記録した.この結果,種子特性に対するアカネズミ類の一連の採餌行動には明確な違いがみられた.サイズが小さな種子と,栄養含有量が少ない種子とは接触頻度自体が少なく,これらの特性は接触前に視覚や嗅覚によって資源価値を判別されていることが示唆された.また,二次代謝産物の含有量に対しては,種子との接触後に匂いを嗅ぐこと,タンニンが多く含まれる種子の採食割合が低かったことから,接触後に嗅覚によって慎重に判別していると考えられた.一方,種子の重量に対しては判別行動に明確な違いを認めることができなかった.本研究の結果から,種子サイズや栄養含有量の選択には,関心を示すかどうかの閾値が存在し,それに該当する種子にのみ関心を持つことが示唆された.この閾値には周辺環境の要因が強く影響すると考えられ,げっ歯類の採餌行動を考えるうえで重要な視点であると推察される.また,げっ歯類が餌資源との遭遇後に,価値を判断する一連の行動シーケンスの存在も示唆された.