| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-078 (Poster presentation)
琉球列島の干潟に生息するミナミコメツキガニ(Mictyris guinotae)は,1日2回の干潮時に集中的に地上へ現れて集団で活動し,満潮時には地下で休息する.近年,本種集団が,約12.4時間の周期で地上活動を繰り返す概潮汐活動リズムをもつことが,室内実験で明らかになった(Moriyama et al., 2017).この報告では,連続する2つの周期が,その和を約24.8時間に保ちながら,各々日々変化する現象から,本種のリズム機構の説明に,Palmer & Williams(1986)が提唱する2重時計説が採用された.この仮説は,太陰日周期(月の南中時刻の間隔:約24.8時間)または太陽日周期(約24時間)をもつ2つの体内時計が,約半周期ずれた位相関係を保つことで,概潮汐リズムを生成すると説明する.一方,本研究では,本種の概潮汐リズムが,集団のサイズに応じて変調することが,新たな実験で明らかになった(阿部, 2019).実験では,集団サイズ40と30匹では,概潮汐リズムが支配的となることが確認された.一方,10,20匹では,周期は2倍の約24.8時間が支配的であり,1匹では,カニは地上へほとんど出現しなかった.加えて,これらの結果から,この集団サイズを利用する概潮汐活動リズム変調機構の最も妥当な説明として,2つの体内時計がそれぞれ異なる地上出現行動解発機構を制御するという新たな作業仮説を得たので,これを報告する.