| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-085  (Poster presentation)

秋期におけるエゾナキウサギの日周活動ー夜間の行動に着目してー
Daily activity of the northern pika in autumn, with special reference to its nocturnal behavior

*山口藍, 押田龍夫(帯広畜産大学)
*Ai YAMAGUCHI, Tatsuo Oshida(Obihiro University)

 日周活動とは,動物が一日の活動において示す一定の周期性のことである.周期的な活動性を示す種は,生体機能の周期を環境周期に同調させることによって,昼夜の変化や季節変化等の周期的な変動環境に適応したと考えられており,活動の周期性及びそれが成立した要因を解明することは,動物の生態学的特性を理解する上で重要である.エゾナキウサギOchotona hyperborea yesoensisは,25℃以上では地上活動を抑制されることが示唆されており,気温が日周活動パターンを左右している可能性がある。しかし,気温の高い夏期よりも,低い秋期に夜間活動の頻度が高くなる例が報告されている.その要因は明らかにされていないが,本種は秋期に冬期の主な採食物となる植物の葉や茎を貯蔵(貯食活動)するため,この貯食活動が何らかの影響を及ぼす可能性が指摘されている.本研究では秋期に顕著な夜間活動が一般的な習性なのか,また,なぜ秋期に夜間活動の頻度を増加させるのかを解明するために, 2018年8月~10月にかけて北海道河東郡鹿追町において,自動撮影カメラで734本の動画を撮影し,その行動を8種類(移動,餌運搬,毛繕い,採食,静止,鳴く,排泄,マーキング)に分類した.また,日周活動パターンと気温との関係を解明するために,温度ロガーを用いて気温を測定した.
 全ての月で日中の撮影頻度が夜間よりも有意に高かったことから,本調査地では秋期の夜間活動が活発ではないことが示唆された.この一因として,9・10月は夜間にエゾクロテンなどの捕食者が多く撮影されていたことから,被食の回避が挙げられる.貯食活動を示す「餌運搬」は日中と夜間の両方で行われ,夜間活動との関連は見られなかった.2時間ごとの撮影回数は,気温が最も低い状態から上昇する時間帯に多く,16℃台で最も多かった(86回).そして,5℃より低温および21℃以上で10回以下に低下したことから,本種の活動には至適温度域が存在することが示唆された.


日本生態学会