| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-090 (Poster presentation)
栄養状態の変化がアミメアリコロニーの生産性に与える影響 *松本恭士, 下地博之, 北條賢(関西学院大学) 異なる生物種間で報酬やサービスを交換し合う相利共生において、その価値は需要と供給のバランスによって変化すると考えられる。真社会性昆虫であるアリは、多くの植物や昆虫と相利共生関係を結ぶことが知られており、共生相手を防衛する一方で、パートナーから炭水化物に富んだ栄養報酬を受け取る。共生相手から提供される報酬の価値はアリの栄養状態に依存して変化する事が知られており、このようなアリの栄養状態依存的な餌資源の価値変動は共生関係の成立や安定性に影響を与えると予測されている。しかしながら、栄養状態の変化がアリの採餌行動や次世代の生産数に与える影響は不明な点が多い。そこで本研究では、アブラムシやシジミチョウ幼虫との共生がよく見られ、単為生殖で次世代を生産するアミメアリ(Pristomyrmex punctatus)を用い、栄養条件の変化がアリコロニーの生産性に与える影響を調べた。アミメアリの1コロニーから3つのサブコロニーを作成し、それぞれを栄養条件に偏りがない状態で飼育した後、与える餌の炭水化物とタンパク質のバランスを変更し飼育した。その結果、炭水化物が乏しい条件では働きアリの生存率が有意に低かった。また、次世代の生産数を調べた結果、春に採集したコロニーでは卵の生産数に統計学的に有意な差が見られ、炭水化物が豊富な条件において卵数が最も多かった。秋に採集したコロニーでは幼虫数において統計学的に有意な差が見られ、栄養条件に偏りが無い条件で最も多く、炭水化物が乏しい条件において最も少なかった。このことは、栄養状態の変化は個体の生存と次世代の生産に影響を与え、特に炭水化物の量が重要であることを示しており、栄養条件の偏りは炭水化物に富む栄養報酬を提供する共生相手との関係にも影響を与えることが示唆される。