| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-092 (Poster presentation)
被食者が捕食者に攻撃に対して自切戦略をもつ生物は自切できる体の部分を負傷しても自切をすることで危機的状況を乗り超えることができると考えられる。しかし、自切経験を持つ個体と自切経験のない個体とでは、野外における対捕食者回避行動の変化についての報告は少ない。今回の研究では自切経験の有無と対捕食者回避行動の変化についてヒガシニホントカゲを例に説明する。トカゲ亜目のいくつかの種は尾を振ることで捕食者の攻撃を尾に引きつけて致命傷を回避と尾部への攻撃対象の変更による逃走を成功させる戦術を行う(能動的な誘い込みの戦術)ことが知られている。今回の研究の論点は、誘い込み戦術の決断は、自切経験の有無(尾振り戦術や自切ができない時期を経験の有無)や尾長の長さなどの個体の状況が対捕食者回避行動に違いを及ぼすのかについて論じる。
4つの項目を取り上げる。1つ目は、尾長が尾振り戦術の決断に影響するのか。2つ目は、自切経験の有無と尾振り戦術(誘い込み)の頻度の違い。つまり、負傷した経験を持つ個体は能動的な防衛戦術の決断を控えるのか。3つ目は尾振り行動から逃走行動への移行と自切経験の有無との関係性。負傷した個体は捕食者から遠距離の段階で逃走行動を決断するのか。4つ目は項目1から項目3の決断が、被食者が捕食者と遭遇環境(被食者から見通しのいい環境(石地)か見通しの悪い環境(草地))の状況によって異なるのかを議論する。
検証方法は、野外調査で観測者を仮想捕食者として行った。観測者が遭遇したトカゲを捕獲するまでの尾振りの有無と尾振り終了時の観測者との距離と遭遇環境を記録した。捕獲後は、尾の自切の痕跡の有無と尾長、頭胴長を記録した。
以上のことから、誘い込み戦術の決断とその戦術から逃走行動移行の決断は、個体の誘い込みを行う尾長や尾の損失経験の有無などの個体の状態が捕食者と遭遇した状況と関係性について考察する。