| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-096 (Poster presentation)
加齢は短命な動物に持久力の低下などをもたらすことが明らかになってきている一方で,長寿命かつ野生動物での知見は限られている.長寿命生物である海鳥では,繁殖成功率が一定の年齢まで向上した後低下することが報告されている.繁殖成功率を低下させる原因の1つとして考えられているのが,採餌行動の変化である.カモメ科に属するウミネコ Larus crassirostris では年齢により採餌場所や移動速度が異なることがわかってきている.本研究ではウミネコの採餌行動における年齢差は羽ばたき能力に起因すると考え調査を行った.
野外調査は2017年に青森県八戸市蕪島の蕪島ウミネコ繁殖地にて行った.ウミネコ成鳥23羽に対してGPS加速度ロガーを装着,約1週間後に回収し17羽のデータを得た.対象個体の年齢は12–24歳であったため,12–16歳を壮齢群,17–24歳を高齢群とした.その後データを繁殖地から1時間以上かつ1 km以上ごとのトリップに分割した.ウミネコの羽ばたき能力を評価するため,羽ばたきの加速度を抽出し,トリップごとに羽ばたき強度,羽ばたき頻度,ODBA (3軸加速度の絶対値の和) の平均値を計算し,壮齢群と高齢群で比較を行った.
ウミネコの平均羽ばたき強度は0.18 ± 0.11 gで,平均羽ばたき頻度は3.60 ± 0.92 Hz,平均ODBAは0.41 ± 0.19 gであった.高齢群は壮齢群に比べて,羽ばたき強度とODBAに年齢差は見られなかったが,羽ばたき頻度は有意に減少していた.
高齢群での羽ばたき頻度の低下が見られたことから,高齢個体の羽ばたき能力は低下していたかもしれない.一方で,羽ばたきを減らして移動できるルートを選択していた可能性もあるだろう.本解析では飛行している場所を考慮できていない.今後,同時に記録していたGPSを元にどこで飛んでいたのかを分けて飛行能力を評価していく予定である.