| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-099 (Poster presentation)
現生鳥類の約20%の種は繁殖地と非繁殖地の間を毎年移動するが、移動時期や移動先の決定要因に関しては未解明な点が多い。これらの決定要因を明らかにすることは、鳥類における気候適応や生息域の決定機構を明らかにする上で非常に興味深い課題である。そのためには、渡り鳥の繁殖地と非繁殖地の両方における生態の理解が重要であるが、繁殖地の生態に関する研究が多いのに対して、非繁殖地での研究例は少ない。ミヤマガラスは中国北部などで繁殖し、日本へは越冬のために渡来する冬鳥である。1980年代には主に九州、中国、四国地方で越冬が確認されていたが、現在は全国各地で越冬する。佐賀市の越冬集団は市街地中心部に位置する県庁付近の樹木をねぐらとし、日中は市街地周辺の田畑で採餌すると考えられているが、その詳細は不明である。本研究では、2017年10月から2018年4月、2018年10月から2019年春にかけて、佐賀市における越冬集団の個体数の季節推移と日周行動を調査した。2017年10月からの調査では、個体数は11月から12月にかけて増加、1月を境に減少し始め、4月末には0になった。2018年10月からの推移も同様であった。したがって、佐賀市で越冬する集団は10月中下旬から次第に飛来し、4月末までには飛去すると考えられる。ねぐらへの出入りは日の出約10分前と日の入り約10分後が最も多く、これらの行動には照度が影響していることが示唆された。また、佐賀市の集団は主に樹木をねぐらとして利用していたが、一部は電線も利用していた。ねぐらは他のカラス類と共有されており、落葉樹に比べて常緑樹がよく利用されていた。採餌はねぐらから2~9 kmの耕作地で数頭から数百頭の集団を形成して行われており、ペリットと胃の内容物には禾穀類が特に多く含まれていた。以上を踏まえ、本種における越冬生態について考察する。