| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-103  (Poster presentation)

行動記録および生理的コストの評価による長距離移動を行う海鳥の採餌戦略の解明
Foraging strategy of seabird : Analysis from their  behavior and physiological cost

*小山偲歩(名古屋大学)
*Shiho KOYAMA(Nagoya Univ.)

海鳥類は、繁殖期に長距離移動を繰り返して採餌を行い、雛に餌を運搬する。繁殖期の親鳥は、自身のための餌確保と同時に子のための採餌をする必要があり、非繁殖期よりも負担が大きい。そのため、効率的に採餌を行い、自身への負担を軽くしつつも、獲得するエネルギーを最大にすることが重要である。海鳥のなかでも一部のミズナギドリ目は、繁殖地周辺で行う短距離採餌と、繁殖地から数百キロ離れた外洋で行う長距離採餌を使い分けている。このような海鳥の採餌戦略を理解するためには、採餌行動の記録と同時に、行動に付随する生理的コストを評価する必要がある。そこで、本研究ではオオミズナギドリを対象に、採餌行動と生理的コストの関係を検証し、海鳥の採餌戦略を解明することを目的とした。本種はつがいを形成して1匹の雛を育てること、つがいは別々に採餌をすることが知られている。野外調査は2018年にオオミズナギドリ繁殖地である新潟県粟島で行った。繁殖期間中の親鳥26羽にGPS・加速度ロガーを装着し、各個体から10日〜14日間分の採餌行動データを得た。さらに、機器装着時に採血と体重計測を、機器回収時に採血と体重計測、外部計測を行った。獲得した血液試料から、行動記録中に負った生理的コストの指標として、酸化ストレス値および抗酸化値を計測した。解析の結果、採餌日数、繁殖地からの最大到達距離、採餌行動の総移動距離、酸化ストレス値および抗酸化値に雌雄差はなかった。このことから、オオミズナギドリの雌雄はどちらも同程度の生理的コストを雛に費やしている可能性が示唆された。さらに、機器装着時と回収時で酸化ストレス値や抗酸化値が大幅に変化した個体と、ほとんど変化しなかった個体が確認された。この違いをもたらす要因を明らかにするため、離着陸回数や加速度からの運動量を含めた採餌行動および外部計測値と、酸化ストレス値および抗酸化値との関係を検証する。


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