| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-112 (Poster presentation)
翅二型性昆虫において、無翅・短翅型同士の交尾率は長翅型同士より高い傾向にある。この理由を検証する際に、これまで多くの研究では一方の性の行動のみに注目してきた。しかし、雌雄の交尾積極性は相手の翅型によって異なる可能性があるため、両性の行動を調べる必要がある。本研究ではホルバートケシカタビロアメンボを用いて、翅型間に交尾率の違いを生じさせている雌雄の行動を明らかにすることを目的とした。その際、マウントに至るまでの行動にも注目した。それはアメンボ類では雌がマウントした雄を拒絶する際に、水面が波立つことによって捕食リスクが高まることが知られていることから、雄ではマウントを拒絶されないような行動、雌ではマウントされる前に回避するような行動が交尾率に影響を与える可能性があるためである。
実験は累代飼育した翅型の異なる雌雄を材料に4つの組み合わせについて行ない、実験開始後1時間以内の交尾の有無を記録した。雄の行動はストーキングを伴う接近(雌に忍び寄る)とストーキングを伴わない接近(雌に素早く近づく)の2つに、雌の行動については逃避(雄の接近に対し離れ去る)と拒絶(雄のマウントに対し体を揺さぶる)の2つに分けた。
交尾率は無翅型同士のペアが最も高く、無翅雄×長翅雌および長翅雄×長翅雌のペアは低かった。交尾行動については、雌雄とも自身の翅型による違いがみられた。無翅雄は長翅雄より頻繁にストーキングを行なっていた。無翅雌の逃避率は雄のストーキングにより減少したが、長翅雌では変わらなかった。一方、拒絶率には雌の翅型間で違いはみられず、ストーキングにより減少した。これらの結果から、無翅雄は頻繁にストーキングを行なうものの、長翅雌の逃避率にはストーキングが有効でなかったため、長翅雌との交尾率は長翅雄と同程度になったと考えられる。本研究から、マウント前の両性の行動を併せて見ることの重要性が示唆された。