| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-113 (Poster presentation)
繁殖期の海鳥は繁殖地と採餌場所の間を往復する.海鳥の採餌場所とその場所の特性 (例えば,生産性の高い海域) を関連づける研究が多く行われてきた.一方で,採餌中の海鳥は採餌場所だけでなく,その場所へ向かう経路も選択している.青森県八戸市蕪島で繁殖するウミネコは,海上と陸地にある水田や魚市場,食品加工場を利用することが示されている.繁殖地が沿岸部に存在するため,ウミネコ Larus crassirostris は内陸部にある水田や魚市場を利用するために道路や川,建物といった場所を通過する必要がある.本研究ではウミネコがどのような場所を多く利用しているのかを明らかにすることを目的とした.
野外調査は青森県八戸市蕪島で行い,2010-2018年にかけてGPSデータロガーをウミネコ成鳥に装着し,約1週間後に回収し,移動経路データを得た.国土数値情報ダウンロードサービスが発行する,土地利用のメッシュデータを元に特徴マップを作成した.ウミネコがいた場所と移動経路との関係を明らかにするため,移動経路と特徴マップを元に機械学習の一種である逆強化学習を行い,ウミネコの経路予測と報酬マップ(ウミネコがどの場所を利用するかの指標)を作成した.同時に作成される重みベクトルから,ウミネコがどのくらい各々の場所を利用するのかについて分析した.
蕪島のウミネコは”海洋”と”建物とその他用地”をより多く訪れていることがわかった.しかし,”建物とその他用地”には港や埋立地,民家,工場といった幅広い場所に該当するため,具体的にどのような場所を利用するのかまでは分からなかった.今後,より詳細な分類がなされている土地利用のデータを用いることで,より詳細な予測を行う予定である.