| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-114 (Poster presentation)
オジロワシ Haliaeetus albicilla は、日本の環境省レッドリストでは、絶滅危惧Ⅱ類(VU)に分類されている。この保全上の位置付けについて議論するには、主要な生息地である北海道の繁殖について把握する必要がある。
北海道では、オジロワシの繁殖数は増加傾向にあるとされる。この傾向はオジロワシが繁殖地を海岸沿いから内陸部に広げているためであると指摘されている。しかし、内陸部の生態は体系的に調査されておらず、繁殖の重要な要因である食性についても断片的な報告があるだけである。そこで本研究は、北海道内陸部にあたる天塩川中流域におけるオジロワシの育雛期における雛への食物(餌種)を明らかにし、これまでの繁殖巣の分布と共に議論した。
研究は、北海道士別市から天塩町にかけて流れる天塩川中流域にあたる北海道大学中川研究林および天塩研究林、その周辺地域で行った。1997年より確認された繁殖巣の動向および巣間距離を分析した。また、食性を明らかにするため、餌残渣回収調査を1997年から2018年まで行い、計17地点で巣に残された餌残渣を回収し、サンプルから餌動物の同定を行った。同定した餌動物は、鳥類、魚類、哺乳類に分類した。ビデオカメラ解析調査では、巣に餌が運搬される様子を記録した。調査は、2016年、2017年、2018年で行われた。
分析より、天塩川中流域での繁殖巣の数は有意に増加傾向を示した。また、天塩川中流域では、鳥類13属、魚類6属、哺乳類6種、爬虫類1属が餌動物として利用されていた。一方、ビデオ映像解析の結果より、天塩川中流域における育雛期のオジロワシは、主に魚類を雛に給餌していた。北海道北部および東部の海岸部で利用されていた海鳥や海水魚の多くは、本研究では確認されなかったため、天塩川中流域におけるオジロワシの雛の食性は、内陸部で独立したものであるといえる。また、巣間距離と残渣から得られた餌種の類似度を分析すると、距離に関わらずやや類似する傾向が見られた。