| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-120 (Poster presentation)
現在、半自然草原は面積が年々減少しており、面積の減少に伴い欠落する種には絶滅危惧種が多く含まれていることが報告されている。島根県大田市三瓶山麓の西の原は、絶滅危惧種であるオキナグサ(Pulsatilla cernua)が生育しており、古くから火入れや放牧が行われてきた半自然草原である。そこで、本研究ではオキナグサの個体数の減少要因の解明と個体群の保全のための簡易的な資料作りを目的とし、本種の生育環境と発芽特性について調査を行った。 オキナグサの生育環境を調べるために調査地(11.25 ha)を踏査し、個体の分布および各個体のサイズ、開花および結実の有無も調べた。次に個体数の最も多かった区において植生調査を行い、オキナグサの生育環境を調べた。本種の発芽特性を明らかにするため、異なる温度および土壌条件による発芽実験を行った。温度条件は、10 ℃、15 ℃、20 ℃、25 ℃、30 ℃の5条件とした。土壌条件は西の原の環境をもとに、土壌、リター、牛糞、真砂土、砂礫とし、遮光率80 %の黒色寒冷紗と遮光率27 %の白色寒冷紗の明暗条件を追加した。 西の原の踏査の結果、オキナグサの開花個体は2個体、非開花個体は32個体であり、火入れ地に集中的に生育していた。確認された2個体はどちらも結実していなかった。植生調査の結果、オキナグサが多く確認された調査区内はススキが優占していたが、本種は群落高および植被率の低い環境に生育していた。 異なる温度条件における発芽実験では、発芽は25 ℃で最も早く確認され、実験開始後7日目であった。発芽および実生まで生長するために最適な温度は、20 ℃~25 ℃であった。異なる土壌条件における発芽実験では、実生の発生数が多かった条件は遮光率27 %で土壌、遮光率80 %で真砂土であった。また、実生の発生数が少なかった条件は遮光率27 %で砂礫、遮光率80 %でリターであった。しかし、実験開始6ヶ月後に生残していたのは、遮光率80 %のリターのみであった。